
| 『オヤジ☆ロックスター』 | 佐々木 克雄(41歳・男性) | 講評を読む |
|---|---|---|
| 『破算ギャルド貧乏神』 | 沖奈 キューリ(39歳・女性) | 講評を読む |
| 『ストロベリー・ナイト』 | 古川 サト(55歳・男性) | 講評を読む |
| 『記憶の海』 | 松田 奈月(35歳・女性) | 講評を読む |
| 『津雲了の解決出来なかった事件』(つくもりょうの〜) | 大木 磐(30歳・男性) | 講評を読む |
※順不同、敬称略(2009年1月30日発表)
二次選考通過作品講評
【講談社 評】
設定は強引なのに陳腐なストーリー陥っていないのは、登場人物が非常に魅力的であったからだと思います。
特に、中年サラリーマンである笹塚孝一と過去に大ヒットを飛ばしたロックスターの的場星一郎が居酒屋で出会う場面は、特に良く描かれています。酒場での喧嘩から、笹塚と的場の声が似ていると気づかれるまでのシーンは読み応えがあり、作者の筆力に驚かされました。
ラストシーンも設定だけを見ると弱いですが、作品を読み込むうちに感動を覚えるほどの仕上がりになっているのは、登場人物が活き活きと描かれていたからに他ありません。
欠点を言えば、「オヤジ☆ロックスター」が売れっ子になるまでの過程があっさり流されてしまっている部分です。本来はここが一番の読みどころになるはずであり、見せ方によってはその後の展開がより心に迫るものになったと思います。
成功と挫折の描き方に注力すれば、物語はもっと魅力的になったことでしょう。
【TBS 評】
シンプルで楽しく、オヤジ世代への応援歌になっています。
少々ありえないシチュエーションも、書き方が達者なので納得して読んでしまう。
しかし、「ドラマ原作大賞」という賞の意味を考え、慎重に検討した結果、大賞には選ばれませんでした。
ポイントとなったのは、“声と体格がそっくりの2人の歌の上手いオヤジ”、“ヒットチャートを席捲する(した)曲”のリアリティ。これらは、小説の世界では、作家の筆力と読者のイマジネーションで納得することが出来ても、ドラマで実際に目や耳にすると、視聴者を物語の世界から醒めさせる危険性があります。その危険を吹き飛ばすプラスαの魅力が、残念ながら見つかりませんでした。
【講談社 評】
この作品の面白いところは、主人公の富子が突然現れた貧乏神と共に仕置き人のような事業をはじめるが、貧乏神が本来の力を失っているために、逆に人々を幸せにしてしまうという部分です。
スーパーパワーを持っているのに、その力が弱まっているために逆の結果が生まれてしまうという「ヒックリ返し」の発想が非常にユニークです。
また、貧乏神の働きのお陰で周囲の人々はどんどん幸せになっていくのに、肝心の主人公だけが独りものであるという「幸せのドーナツ化現象」も物語をより面白くしています。
エンターテインメントとしては、ある種のスーパーパワーを失ってアベコベの状況であったものが、本来の力を取り戻す過程が物語のカタルシスになるのですがが、この作品の場合、貧乏神が本来の力を取り戻すと周りの人たちが不幸になってしまうというジレンマが生じてしまいます。これは、貧乏神というキャラクター設定の限界であり、受賞には至りませんでした。
【TBS 評】
明るいコメディ作品と思いきや、後半になって輪廻転生のエピソードが突如現れるという不思議な作品。
いろんなジャンルのドラマの要素を詰め込み、“仕掛け”を考える姿勢は良いです。
しかし、テーマやキャラクターの掘り下げが不足していたように感じました。
そのために、登場人物に感情移入しづらく、主人公と貧乏神が引き起こすエピソードの数々が、悪ふざけに見えてもったいないと思いました。
下品なネタも排除し、“お金とは?”幸せとは?”ということを、作者なりにもっと表現して欲しかったです。
【講談社 評】
筆力があり、リーダビリティが高いという点において、講談社側での評価は高かったです。
しかし、主人公の2人が抱える隠蔽された過去の真実は設定が弱く、物語への引き込まれなかったのが残念でした。肝となるミステリー部分が弱いために、登場人物の振る舞いが「過去を清算できない自分勝手な人たち」に映り、物語の説得力に欠けていました。
また、何の変哲もない生活を送る主人公が、ある事件をきっかけに過去の大きな事件の真相に迫るという展開は、少々読み飽きた感があります。
こういったありふれた設定の小説において、読者を作品の世界に引き込むためには、よほど過去の真実が衝撃的であり、緻密に構成されたものでなければなりません。その点においてこの作品は、ものたりなさはありました。
【TBS 評】
小説としての体裁が整っており、読みやすかったです。
レコードなどの小道具も、キャラクターを描くのに有効に使われていました。
内向的な話だが、妙な力があり、惹きつけられるところはありました。
しかし、“なぜ、母は自殺したのか?”、“なぜ18年前に山に登ったのか?”“なぜ父は北海道に行ったのか?”“なぜ事件は解決したのか?”・・・などミステリーとしては幾つもの“なぜ?”を放置しすぎているし、“主人公のトラウマ解決話”と“事件解決話”がリンクしていないこともあって、大賞には届きませんでした。
【講談社 評】
記憶システムのデータ化が成功し、人間の記憶を保存することが可能になった社会で、3分間しか記憶を持てない主人公が「媒体」となって他者の記憶の読み込みを行うという設定は、読者が許容し受け入れられるのか、ギリギリのラインだと思いました。
しかしながら、読み込んだ記憶ひとつひとつにドラマがあり、主人公が忘れてしまった周囲の人たちとのドラマもあり、非常に魅力的な作品であると思いました。
人間の記憶というものの多様さやときには記憶そのものがウソをつくという不思議さ、忘れてしまうことの悲しさなど、読み手を感動させる要素がたくさん盛り込まれている作品です。
静かにコンピュータの横で目を閉じる主人公の脳に他者の記憶が鮮やかに再現される様は、不可思議でロマンチックであると思います。
この小説が原作となりドラマ化されたときには、どういったものが出来上がるのか期待させられる作品です。
【TBS 評】
主人公は3分間しか記憶を留めることが出来ないため、物語の中盤までは行動が能動的でなく、もどかしく感じました。記憶のメカニズムの説明が難しくて、各エピソードやディティールの練りこみも不十分だったりするのが惜しいです。
しかし、読み終わった時に残るこの甘美な余韻は何でしょうか・・・?この余韻こそドラマの萌芽であり、やがて巨木に成長するのではないでしょうか?
この作品が大賞に選ばれたのは、“記憶をハードディスクに記録する”という発想の面白さもさることながら、小説に書かれている以上に、映像ではより深い表現が出来るという可能性に選考委員が票を投じた結果です。
スリリングさと、程よい甘さを兼ね備えた、新しいドラマの誕生を期待します。
【講談社 評】
探偵役の津雲了と謎の隣人が織りなすライトなミステリーです。非常に狭い世界を舞台にしていますが、会話を描くのが上手くテンポも良いので飽きずに読むことができます。
作者は通常のミステリーとは違った「はずし」の面白さを表現したいのかもしれませんが、その「はずし」方が少々マニアック過ぎるところが残念でした。
また、いくつかの短い話の集積ですが、小さな事件が次第に大きな事件につながっていったり、はずしたと思われていたことが意外な展開に結びついたりといった仕掛けを設け、読者を惑わせてほしかったです。
しかし、物語を構成するネタは多く、一見すると脱力ミステリーでありながら、たくさんのアイデアやエネルギーを注いでいる部分に感心させられました。
「どこまで本気なのかわからない物語」をこれほど面白く読ませてしまうのは、作者の才気によるものだと思います。惜しくも受賞を逃しましたが、これからも書き続けてほしいです。
【TBS 評】
舞台はほぼマンションの二部屋に限定されているし、登場人物も多くはない。
限られた世界での、連作ミステリーという目の付け所は悪くありませんでした。
しかし登場人物に“役割”は与えられているが、”キャラクター“が見えず、トリックも意外性が薄いのが難点。
各エピソードも散発的で、ドラマにしたいと思わせる縦軸がありませんでした。”アイデア“だけに終わらず、”ストーリー“と”キャラクター“を備えることが出来れば、一話完結のオフビートなミステリードラマとして成立するかもしれません。










